「……!」


いつからそこにいたのか、近くの木の根元に男の人が腰かけていた。
わたしが気づかなかっただけで、ずっと前からいたのかもしれない。


「そんなに泣いて、可愛らしい顔が台無しになっちまうよ。」
「あ、の…。」
「自己紹介がまだだったねぇ。私は、三笠だよ。」


三笠と名乗る人は、長い髪を一つに縛り、前髪で右目を隠している。
その髪型が着ているシンプルな着物によく合う。

わたしも自己紹介をすると、可憐な名前だねと返された。


「それで、陽菜はどうして泣いていたんだい?」
「……わたしは、迷惑な存在でしかないんです、」


ぽつり、話し始めた。
未来から来たこと、長門に乗せてもらっていたこと、わたしは足手まといにしかなっていないのではないかということ。


どうしてか、見ず知らずの人のはずなのに、三笠さんには全てを話せた。