「おいっ、つばさ」

「いやでもなぁ~」

「おいっ」

「呪いの手紙とか? いやいや、今どきやんねーよなあ」

「おいってば!」



我に帰った時には、もう遅かった。ゴツン、と鈍い音が二回と、バカ男子二人分の悲痛の叫びが教室中に響いた。

先生

教科書の角は痛いんだってば。



先生は一つせき払いをすると何事もなかったかのように教壇へと戻った。



「ったく。ユージのせいで怒られたじゃねーかよ」


「んだよ。お前が無視するからだろー」

「ユージ寝てたじゃんか。急に起きるんじゃねえよ」

「だってなんかすげー恐い夢見ちゃってさあ。ちょっ聞いてくれよ。俺な、夢ん中でさあ、でっけーたこ焼き背負ったババァに追っかけられて、それで――」

次第にユージの声のトーンが高くなる。隣の席の女子もチラチラこっちを見始めた。

「おいっ、ユージ。後ろ後ろ」

「ちげーよ。後ろじゃなくてな、たこ焼きババァが前からだな」


「佐渡」

「ちげーよ。佐渡じゃなくて、たこ焼きがだなぁ……あっ、せんせ――」

ドスっ


「いいぃいぃいいー!!!!!!!」



ユージの脳天にあの“悪魔の角っこ”がクリティカルヒットした。