【TUBASA】


「だりぃ」

空は薄いライトブルーに淡い雲が浮かんでいて、窓際の一番後ろ、俺の席は気持ちいい風が吹いてくる。6月頭になってそろそろ梅雨の時期なのに、一向に暑くなるばかりだ。しかも嫌な暑さ。


前に座ってるユージは気持ちよさそうに眠っている。涼しげな声で読み上げる学級委員長の英文章。

きっと彼にとっては、“マイクの過去の功績”よりも、昼に食べる天丼の事で頭がいっぱいなんだろう。


今日はこの後体育だ。しかも俺の大好きな陸上。

一日中走っていたい。

走ることが仕事になったら幸せだろうな。親父みたいにパソコンとにらめっこして終わる人生なんてまっぴらごめんだ。



「あー、早く走りてえー」



背伸びをした瞬間、風が一瞬ピタリとやんだ。


なのにカーテンはふわりと浮かんだまま。俺だけを包むようにふわりと浮かんだままだった。

頬に何かが当たった。



ユージの方からでも、隣の女子からでも、後ろの掃除ロッカーからでもない。


半分空いたその窓から飛んできた。



まっ白な便り。真っ白な紙ヒコーキが。