今日は忙しい。50本ずつ作ってたセットが既に3つ空いた。


「いらっさーせー」

「まいどー」

「いかがっすかー」



あたしはひたすら奥の調理場で仕込み。この店は昼間テイクアウトで販売して、夕方からは居酒屋に変身する。その両方の仕込みを任されていて、最近じゃ一人で回せるようにもなってきた。


本当は焼き場もやってみたいが、担任にばれるとめんどいからあと一年半はこのポジションだ。


「まいどー」

「ねえねえ、のぶちゃん」

「んだよ濱村。お前まだいたのかよ」

濱村が生樽の上に座り込み、かれこれ1時間。一向にどこうとしない。さすがにここでは強く言えない(一応こいつは、つくね奥さんの姪だから)


「あたしもやってみたい、それ」

濱村が指差したのは、軟骨に串を刺すという作業だった。あたしが「ダメだ」と言ったにも関わらず、勝手に串を持ちだした。

「あたしこーいうの得意だよー……ぬあっ!」

すっとーんと軟骨が宙を舞い、ゴミ箱に見事ゴールインした。あたしが睨むと濱村は舌を出し、「ごめん」と謝った。