「現実の足場では周りから傷つけられ、自身の足場では自身に傷つけられ、ようやっと君らしくいられるここでも、傷つきたいと言うのなら――」


“彼”が持つナイフが私の左腕に――傷だらけの腕に添えられる。


“彼”のナイフは私を傷つけていない。昔の古傷だ、痕と成り下がり、痛みすらも無い傷から――血が流れ出す。


黒が混じる赤。口開いたかのような傷口から、でろりと顔を出す。


再現された痛み。
再帰したあの日。


こんなに痛いのに、ああ――