店へ入って来た女性は、すぐに店長へ深々と頭を下げて、「大変申し訳ありませんでした」と震える声で謝罪の言葉を口にした。
女子高生相手には粘着質な絡み方をした店長も、さすがに大人に向かってそんな態度は取らないらしい。
「いえいえ大丈夫ですよ、お母さん」
営業スマイルを浮かべながら、女性をスタッフルームへと通した。

和花ちゃんは、ペコペコと頭を下げる母親を、冷めた目で眺めていた。
自分のために親がそうしてくれていることが分からないのだろうか。
しらけた表情で母親から目を逸らすと、再び机の脚を蹴った。

「和花!
あんたも謝りなさい!」

母親にそう言われた彼女は、座ったまま、私を振り返る。

「ごめんね」

どうして私なのだろう。
そう思いながらも返しに困り、「いえいえ」と言うしかなかった。

「バイトの子じゃなくて、店長さんに!」

母親がヒステリックな声を上げると、彼女は面倒そうに店長へ視線を向け、やはり座ったまま「大変すみませんでした」と怠そうに言った。