「榛名君、心配してたよ」


「うん・・・迷惑かけちゃった」


 新しいパジャマに着替えて、ベッドに座る。



「久しぶりに一緒のところ、見たわ」



「一緒って言っても、私が熱があったから仕方なく、だよ。本当は、告白された一年生の女の子と一緒に帰る約束だったんだもん」


 刺さるような視線を向けて私を見ていたあの子。


「でも、送ってくれたじゃない。しかもお姫様抱っこのオプション付きで。いいな~、私もお姫様抱っことかされたいな~」


「してもらえばいいじゃない。したいって人、いっぱいいると思うよ」


 それこそ、行列が出来るくらいいると思うけど。


「ただしてもらっても嬉しくないわよ。好きな人にしてもらいたいの」


 そう言って、美織ちゃんは少し寂しそうに笑った。


「美織ちゃん・・・好きな人、いるの?」


 布団から起き出して、私のベッドに腰を下ろす美織ちゃんは、いるわよ、とサラリと言った。


「どんな人?」


 モテる美織ちゃんは今までも何人か彼氏がいた。でも、いつも告白されて付き合ってる、そんな感じだった。

 美織ちゃんが好きになった人・・・それは一人しかいない。今でもその人の事が好きなのかも・・・。


「美伊の熱が下がったら話してあげる。今日はおとなしく寝なさい」


「え~、聞きたいのに」


「聞かせてあげるって。また、熱が上がったらいけないから寝るの。寝ない人には話さないよ~」


「ずるい・・・」


 あははっと笑いながら、私に布団をかける美織ちゃん。


「ちゃんと話してあげるから。おやすみ」


「・・・おやすみ」


 仕方なくそう言って、まだ熱いまぶたを閉じた。


 額に冷却シートを張られて、ひんやりしていた。


 榛くんの手も、冷たくて気持ちよかったな。

 
 額や頬に感触を思い出して、冷たい指先が恋しくなった。