気が付いたのは、すっかり外が真っ暗な闇に包まれた頃。


 どれくらい眠っていたのかも分からないけれど、まだ熱があるのか、頭はフラフラしていた。


 起き上がろうとした時に、部屋の扉が開いて美織ちゃんが入ってきた。


「気が付いた?熱がかなり高かったんだけど、計ってみて」


 体温計を受け取る。


「何か食べる?」


「ううん、それよりも何か飲みたい」


「ちょっと待ってて」


 そう言って一階へと降りていく。


 直ぐにピピピッと計測完了の電子音がして、見ると38・7度。


 ・・・・・まだ結構高いかも。


「何度だった?」


 りんごのジュースを入れたグラスと交換に体温計を渡す。


「まだ結構あるね、それ飲んだら着替えしてちゃんと寝てなさいよ。お母さん、夜勤でいないから、私がついててあげる」


「うん・・・ありがとう」


 昔から美織ちゃんは母親が夜勤でいないときは一緒にいてくれた。

 両親は看護師と医師で、母は私が中学に上がった頃に夜勤もするように本格的に看護師として復帰していた。

 そんな中で、寂しい夜が無かった訳じゃない。

 でも、そんな時は美織ちゃんが側にいてくれた。

 一人では不安な夜も、二人だと安心できた。


「さっき、お父さんが帰って来てくれて、お薬ももらってるから大丈夫だから。ちゃんと休むのよ」


 美織ちゃんは私のベッドの横に布団を敷く。


「ねえ、美織ちゃん・・・」


「ん?どうしたの?」


「榛くん・・・榛くんが送ってくれたんだよね?」



「憶えてない?」


「何となく分かる気がするけど・・・ハッキリとは」


「そっか。榛名くんだよ。治ったらちゃんとお礼、いいなさいよ」


 美織ちゃんはお母さんみたいにそう言って、布団に潜り込んだ。