「…開けますよ?」
扉の取っ手をつかみながら看護士が聞いたので、こくりと頭を小さく動かした。
「いいよ、開けて…」
車椅子の肘掛けをぎゅっと握る。
カラカラと控えめな音を鳴らしながら目の前の扉が開いた。
…玲二だ
玲二はベッドの上で、扉が開いたことに気づいていないのか、ぼぅっと天井を見つめていた。
前にきたときと目が開いてるか閉じてるかしか違わないのに、急に怖くなってしまい車椅子が進まない。
「……っ…」
喉から振り絞った玲二の名前は音にもならず、ただ口の中で消えていくばかり
「…れ…ぃじ…!」
やっと言えたと思ったら喉はカラカラでこの名前を呼ぼうとしただけでひりひりと痛む。
声を聞いて、玲二がびくっ!とこちらを向いた。
「ッ…梨華…!」
切れ長の瞳を大きく見開かせて、信じられないといったように唇を震わせる。
看護士が押してくれて、やっと車椅子が進む。
玲二との距離が近くなるたび、心臓がどくどくと脈打つ。
手を伸ばせば触れ合える距離で、車椅子は止まった。
「………生きてたんだ?」