《湊Side》
突然、名前を呼ばれ顔を上げると、こんな所には絶対居るはずのない隆尚さんが何故か目の前に立っていた。
「え…?な、んで…?」
「だれだぁ?」
驚きすぎて、動けずに居ると、先ほど話しかけてきたナンパ男が首を傾げ聞いてきた。
「あ、えと…ガッコの先生…」
「へぇ?なんで先生がここにいんの?え、何?もしかして保護者同伴とか?ハハ…」
男の言葉にイラッとして、言い返そうと口を開こうとしたら先に口を開いた隆尚さんの言葉に遮られた。
「湊ちゃん、ここ入場は18歳以上だよね?それに今何時だと思ってるの?それに、その人は誰?」
「それは……。そ、んなの…、先生には関係ないでしょ!先生だって教師なのにこんな所にいるぢゃない?」
「湊ちゃんがこのビルに入って行くのが見えたから…。それに、関係なくはないよ。ほら、とりあえずここから出よう」
言って、隆尚さんはあたしの腕を掴もうと手を伸ばした。だけど、腕を掴むより早くナンパ男が隆尚さんの手を払い、庇うようにあたしの肩を抱いた。
「ちょいちょいー、みなとちゃん嫌だってよー。無理やりはいかんよー?せんせーも固いこと言わず遊んでっちゃえばー?」
「ちょ…っと、触んないでよっ!」
勝手に触ってくる馴れ馴れしい男にムカついて、そろそろ殴りたくなった。
隆尚さんも「先生」だって言うなら見てないで助けてくれればいいのに…
そう思い、ちらと隆尚さんのほうを窺うと、隆尚さんは眉間に皺を寄せて睨むようにこちらを見ていた。
――え…?
声を掛けようとしたら、
突然隆尚さんは、ナンパ男をあたしから引き剥がし、今度こそあたしの腕を掴んだ。
「え…?な、に…?」
あたしの疑問には答えず、隆尚さんは掴んだ腕をそのままに、急に走り出した。
「うわっ!?ちょっ、ちょっとぉ!?」