「ふぃー、スッキリしたー!ハンカチ、ハンカチっと…」


ハンカチで手を拭きながらエレベーターに向かった。



「レストランって、やっぱフレンチかなー?やっば、作法わかんないぢゃん…」


そんなことを一人呟きながら歩いていると、
静かなロビーに騒がしい靴音が響いた。


場違いな靴音に思わず振り向くと
その瞬間、何かにぶつかり
その衝撃に踏みとどまれず、尻餅をついてしまった。



「いったー…!?何…」


「うわうわ、ごめんね!?大丈夫かい?立てる?」


「え?」


頭上から声をかけられ見上げると、
男の人が心配そうな顔で見つめ手を差し出して来た。



「あ、ども…」

その手を掴み、立ち上がる。

「ホントごめんね、痛い所ない?大丈夫?」

「あ、いえ。お尻が痛いくらいで別に…大丈夫、です」


あ、よく見ると、イケメンかも。
17歳くらいかなぁ?



「そう…?あ、君もエレベーター?ちょうど来たみたいだね」


「あ、はい」

「どうぞ、可愛いお嬢さん」


そう言って男の人は、エレベーターの入口を押さえ、
まるでお姫さまみたいにエスコートしてくれた。

「ありがとーゴザイマス」


照れ臭くて、思わず笑ってしまった。


「何階?」

「あ、23階お願いします」


「奇遇だね、俺も23階だよ。君、いくつ?」


「あ、11歳です。お兄さんは?」

「俺は今年二十歳だよ。あれ?一人で来たの...ってな訳ないよね。
親御さんは?もしかして迷子だったりする?」