《楓香》

ついにあと、1時間でクリスマス・イブ…

残業は終わった

帰るかな…

荷物をまとめて、パソコンを閉じた。

肩をコキコキ鳴らしながら、エレベーターを降りて会社を出る。


「楓香、お疲れ様」


そう、あたしをよんだのは1時間も前に会社を出た奏太だった。


「え、どうして。1時間前に帰ったじゃない」

「あぁ、そうなんだけど。クリスマスだしね」

「疲れてるなら、家まで送るけど?」


そう言った奏太は、確信を持ってここに来たんだと思った。

断るはずがないと…。


「行く。さびしかったもん」


またには、甘えよう。

クリスマスだし


「じゃあ、車乗って。」


車に乗ったが、お互い無言でいた。

いつものバーに入った。


「おれ、カクテルで」

「あたし、白ワインを」

「始めっから、とばすねー」

「当たり前でしょ。好きなんだし。」


注文したのが出されて、二人ともそれっきり会話がなくなってしまった。

久しぶり過ぎて気まずい。

でも、その沈黙を破ったのは奏太だった


「あのさ、明日から大阪だって?」

「うん。そうなんだ。クリスマスなのに…」

「俺いなくて、さびしい?、」

「当たり前でしょ。クリスマスに仕事だなんて最悪。奏太も仕事でしょ?」

「おれ、休みもらった。2日間 」

「え!?」

「今日、課長がくれた。だから、明日俺もついて行こうと思う。いやかな?」

「嫌じゃない。むしろ嬉しい!」


絶対にひとりクリスマスだと思ってたのに。

まさか、奏太と過ごせるなんて…

サンタさん、ありがとう!


「それでさ、提案なんだ。」

「なに?」

「楓香の仕事は25日までだろ。大阪に滞在。」

「そうだよ?」

「そこで、楓香に1日休暇をもらった。おれも。その代わり、俺は年末1日仕事の日が出来ちゃったけど。」

「うそ!?よくOKでたね?」

「だから、おれら、26日もやすみ!それを利用してたくさん遊ぼ。」

「奏太〜!ありがとう!!!」

「よかった。断られると思った。」

「うそつけー!」


その話を聞いてうれしくなり、ついにバーで抱き着いてしまった。

もちろん、奏太が動かないはずもなく、狼に変身した奏太に食べられてしまった。

ただ、嬉しくて抱きついただなのに…