ぎゃんぎゃんと彼女は憤る。

そんな彼女をなだめすかすケンタウロス。


憤らせた張本人の彼は、まったくの無関心。

ふわふわの座り心地の良さそうな2人がけの大きな灰色のソファーに横たわった。


そして目をつぶり、コウモリに命ずる。

「ウェイ・・・戻っていいぞ。」


静かな、しかし威厳のこもった声を聞くと、コウモリは一瞬姿を消した。

しかし、次の瞬間には、コウモリが羽ばたいていたところに、1人の少年が立っていた。



10歳くらいの少年は、女の子のような可愛らしい顔で、華奢な体つきだった。

肌の色も白く、唇は桜色。

ぴょんすか元気に跳ねている黒髪に、大きな漆黒の瞳。

睫も長い。



綺麗なソプラノで、少年は言った。

「わぁい!やっと、本来の姿に戻れましたぁ。任務終了ですっ」


ニコニコ笑う男の子に、彼女は思わずと言った感じで、笑いかけた。


「ウェイの本来の姿を見るのは、久しぶりだな。にしても、その髪はなんとかならないのか?」


「あー、どうも僕の髪、元気が良すぎるみたいなんです・・・。」


「ウェイらしいな!

・・・ところで俺が呼ばれたのは、姫君の事についての話があるからじゃなかったのか?」



ケンタウロスの言葉に、その場にいた全員がコクリと頷いた。




「・・・・・・・・本題に、入ろうか。」


そう、彼が静かな声で、始まりの合図を出した。