彼女が箒に跨げば、ふぅっと、まるで息づくように箒が身動きし、ふわりと宙に浮いた。



「ウェイ、私は先に向かっている。お前は早くケンタウロスを連れて来い。」


《分かりましたぁ!ご無事を祈ってます!》


「・・・・・・・・あぁ。」



彼女が跨いでいる箒は、するすると上昇していく。


そして、意思を持った鳥と同様に、目的地へと飛んで行った。


















―――そして、わずか数十分後には、何キロも離れたある館の上空に、彼女はいた。



その館には、薔薇園がある。

薔薇園の中の薔薇の色は、真紅と漆黒のみ。


大きな館だが、薔薇の色から分かるように、暗い、シックな雰囲気だ。

その館周辺だけ、もやがかかっている。


不穏なものを感じさせる館だが、彼女は怯む事なく、大きな門の前に降り立った。




緑の蔦が絡まっている門の中にスルリと入り、チャイムを鳴らす。



ボーン・・・。

という、重厚的な音が響いた。