ざわっ
王の言葉に場がざわめいた。


「一国の王が、まだ素性もわかっていない罪人に会いに牢屋に行く?」

「なんて危険な。」

「陛下!せめて素性がわかってからに!」


「––––––静まれ。」



王は朗々とした深い声で、声をあらげずにリーダー達の口を閉じさせた。

氷のような冷ややかなアイスブルーの瞳は、決して揺るがない。



「これは国を・・・世界を揺るがす大事案。私が行かなくてどうするのだ。」



藍色の瞳をきらめかせ、白き魔女はそれを見ていた。

心の内で"彼"に苦笑いながら。



(本当、何者なのよあなた。あなたの予想通りに国王が動くなんて。
はぁー。敵わないなぁ。
・・・・・・また好きになっちゃうじゃない。)



国王はバースに目を向け、告げた。



「バース、そなたは先に空き部屋へ行け。詳しく話を聞き出すのだ。」


「了解。では、国王、お気をつけて。」


兵が再びドアを開けた。

黒いマントを翻らせ、内側の赤色を見せつつ、漆黒の吸血鬼はそこから出て行った。


国王、アスクは、その後から順に出て行––––こうとしたところで、立ち止まった。


白き魔女がガタッと音を立ててイスから立ち上がったからだ。

「アスク様っ・・・お気をつけて!」


心配そうに眉を歪め、唇を噛み締めて。

握りこぶしをぎゅうぎゅう握るその姿は、思わず胸が詰まるほど健気でいじらしく見えた。