「そうか。ソウ、ヒルゥ、シオの様子は?」


アスクが聞けば、兵士は複雑そうな顔をし、言いにくそうに報告した。


「それが・・・ヒルゥが、青年の捕獲を妨害しまして。
青年と同じ牢に入っております。」



その言葉にアスクは眉をひそめ、会議室はざわめきに満ちた。


ヒルゥ・・・規格外に若い彼は、しかしそこらの医者より格段に有能だ。

代々優秀な医者を生んできたキオ家の一人息子。"医学の天才"。



「天才医者が、か。」

アスクはボソッと呟いた。


(天才ゆえに、何か感じ取ったのだろうか。そうしてその若さゆえに、突き進んだのか?
・・・それは、裏切りか?)



アスクはふっと自嘲げな笑みを浮かべた後、口元を引き締めて兵士に告げた。


「彼らを捕らえている牢屋へ、案内してくれ。」

(裏切りと呼ぶかどうかは、実質的な問題ではない。
今は私達の邪魔をした"邪魔者"を手の内に収めなければ。)



「はい!ではご案内致します。」


「待て。ソウとシオは?」


そう兵士を止めたのはバースだ。

兵士を見る目は心なし冷ややかだ。


兵士はその眼差しにヒヤリとしつつも答えた。

「ソウとシオからは経緯について詳しく聞いているところでして。
ここの丁度真上の空き部屋に他の兵と共にいます。」


「そうか。では、お前は俺をそこに連れて行け。」


「で、ですがアスク様は・・・」


「どうせ連絡係としてもう1人外にいるだろう。
そいつに頼め。」