彼らの脳裏には一様に、今はなき島国が浮かんでいる。


無邪気で奔放で、会った者全てに愛された姫君は、今の彼らの中では恐怖で脅威。


『陰謀』より『反乱』よりも、『破壊』の方が飛び抜けて恐ろしい。

なんだかんだ言いつつ、彼らはこの国を愛しているから。




遅々として好転しない状況の中、彼らは苛立ち、不安に苛まれながらも祈っていた。

どうか、あの姫君が何も起こさないように、と。






ーー数名を除いて。




(ソウ、ヒルゥ、シオ・・・この3人までいなくなっているのは何故だ?

3人は事の重大さを解っていたはずだが・・・。

裏切り?反乱?まさか。あいつらがそんなこと望むわけがない。
だが、姫君と共に消えたのは事実。

だとしたら、姫君を追ったか、やむを得ない状況だったか・・・)



黒き魔女ーーアスクはそこまで考えて、つと口元に自嘲げな笑みを浮かべた。





(私達が"逃げている"ことに気づいたか。)




そこまで考えが行き着くと、彼女はキッと前を見据えた。




(何にせよ、このままでは危険。早急に見つけなければ。


ーーにしても。

3年前に確かに姫君とあいつらにかけたはずの、追跡魔法が消えているなんて。

ウェイがあいつらに"警告"に行ったときはまだかかっていたのに。


この数時間で私の魔法が解かれた、ということは・・・姫君の側には相当協力な魔女がいるってこと。

魔女のリーダーである私と同等、あるいはそれ以上に強い魔女なんて、そうそういないはず。



絶対、見つけて裁いてみせる。

魔女のリーダーとして、容赦はしない。)