なんでだろう。
なんでこんなに、胸がきゅぅってするんだろう。

なんでかわからないけど、すごく、すごく、苦しい。


老人はそっと、あたしの肩を抱いた。
優しくーー壊れ物に触れるように。

温かな老人の体温を感じる。
懐かしさを感じる温度。

あぁーーきっと以前にも、この人の温度に触れたことがあるんだ。




「ご、めんなさっ・・・」

唇からこぼれ出た謝罪は、ひどく震えていて。
無性に情けなくなった。


「なんで謝るんだ。お前は悪いことなんて一つだってしてないだろう。」


「・・・あなたが誰か、わからないんです。
あなたを、覚えてない・・・・・・。」


「それはお前が悪いわけじゃない。仕方のないことだ。
それに、俺だって最初、お前が誰だかわからんかったんだ。おあいこだろう。」


ポンポン。
老人があたしの背中を優しく叩いた。





「ーー最初の質問の答えを教えてやろう。
星は今、笑っているだろうよ。
ケラケラと、子供のように無邪気に笑い転げているだろう。」


あたしの背中をリズム良く叩きながら、老人は、淡々と言った。