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ふと目を開けると、部屋の中が真っ暗で、びっくりして跳び起きた
「………あぁっ……」
やってしまった…
寝過ぎでしょ……
がっかりとしているうちに、暗闇に慣れ、
何だかたくさん眠ったお陰で、頭がスッキリとしていた
パチンと鳴った音と共に、急激な光にクラクラとした
眩しい!
そのままバスルームに向かう
すっかりと、朝方の魔法が解けて、
いつもの慣れた部屋で、テキパキと動く
昼間のドキドキも、すっかりと消え去り
目の前の事だけに捕われる
時折ユンファの姿が浮かぶけれど、何となく考えることを避けた
シャワーにうたれながら、私は失笑する
温かな水が身体を浄化する
微かに存在を現した淡い感情も共に流してしまう
何もなかったかのように、元の私に戻る
今回の仕事で、私は何を見出したいのか
どうしていきたいのか
単なるお遊びじゃない
私はいつだって、真剣で、
妥協、なんて言葉も存在しない
完全に切り替わった自分を鏡で確認する
「…………よし!」
勢いをつけ、そのまま部屋へと戻る
カテゴリー別にわけていた写真群を、また更にさばいていく
SOUTHに合う、テーマを再度構成しよう
やる気がメラメラとして、このまま勢いに乗ろうと、机に向かう
すっかりユンファのメールアドレスが頭から消えていた
一時間ほど、異常なくらいの集中力でユンファから預かってきた写真に目を通し、さばいてゆく
自分の資料と重なり併せて、私は動揺した
イメージがピッタリと合う
それらを混ぜ併せて、見やすい様に綺麗にハサミを入れ、業務用のスプレーのりでコラージュしてゆく
これなら、明日の打ち合わせには、もう少し短時間でも話が進めやすくなっていいだろう
と、次の打ち合わせの事に頭が切り替わった瞬間
私はしまい込んでいた記憶の扉の鍵をみつけた
ハッとして、バックにしまいっぱなしだった携帯を取り出す
画面を開くと、着信履歴が三件
メールが15件
つい、いつもの癖で私は先にメールを確認した
blogを毎日マメにアップしている私には、同じくblogを書いている友人達からのお知らせメールが沢山来る
15件のうちのメールは過半数がそれ関連のメールで、他には妹からのメール
泉からのメール
その他、企業デザイナー時代の知人達からのメールだった
一通り目を通し、順に返信をする
メールを返信し終えた後、、次の打ち合わせのアポを取ろうと、着信履歴からユンファの電話番号を利用しようと履歴を開いた
「………!」
三件の着信履歴のうち、二件の表示が、【ユンファ】と出ていた
昼過ぎに一件
夕方に、一件
もう一つの着信履歴は、お父さんだった
………………微妙…
世間でもスーパーアイドル的存在ユンファの名前と羅列する
父の名前【隆幸】
私はお父さんをタカユキと呼んでいる
もちろん、本人の前では恐ろしくて呼べない
パワフルで超亭主関白なお父さんは、
東京に上京してから、毎日のように私に電話をしてくる
「早く大阪に帰ってこい」
それしか言わないお父さんの台詞をうまくかわすのが毎回疲れる
帰らないってば
ユンファの二件の着信をも忘れさせるお父さんの存在感には感服する
折り返さないと五月蝿いし、仕方ないから
渋々お父さんに折り返した
「何で電話に出やんのや
何してたんや!」
案の定、予想どおりの言葉が出てくる
「寝てたんやって」
ちょっとけだるそうに答えてしまった
しまった!
「何や、ほんまか?何でそんな言い方なんや?」
…………めっ……面倒くさい…
「ほんまやって、今から仕事するから、また明日な」
適当に返そうとする
「仕事!お前、もう仕事なんかせんでええから帰ってこい!!」
…………出たよ……
いつもの展開に、ため息をつきながら、
あーだこーだと言い訳をして、
やっと電話を切った
つ、疲れる…………
大事にしてくれてるのはわかるけど、
あんまり子煩悩すぎるにしては、私はもういい歳なんだけどな……
すっかりお父さんとの電話で体力を使い果たした私は
すっかりユンファの事を忘れてしまった
携帯電話を閉じ、また作業をしようと、資料に手を伸ばした
「…………あ!」
テーブルの上にあったSOUTHのDVDを見て、私はやっとユンファに電話をしようとしていた事を思い出した
………しまった
また携帯を手にし
画面を開こうとした
瞬間
~♪~♪~♪~
ユンファのソロ曲【trajectory】が流れた
慌てて携帯を開く
……………?
登録のない番号が表示されていた
誰なんだろう…?
わかるはずもなく、私はその番号を見つめた
見ていてもわからないので、とりあえず出てみた
「…………………もしもし?」
小さくそう声を出した
「もしもし、辻元さんデスカー?」
そっ……その無邪気にイラだつ声は……
「そっ…ソンミン…さん!?」
うっかり、呼び捨てにするトコだった…
てゆうか、何でソンミンから!?
「はーい!ソンミンですょ~!
辻元さん、ちょっとお話、いいですか~?」
陽気な声でソンミンがそう言った
な、何で!?
「……い、いいですけど…」
何の用件!?