すっかり畏縮している私を見て、王妃様はコロコロと笑った。
「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ。あなたのためらう気持ちはよく分かるわ。私も昔はそうだったから」
「え?」
いやいや、ためらいの度合いが違うと思うんですが?
「私、表向きは公爵家からの輿入れって事になってるけど、元々はあなたと同じ町娘なのよ」
はいーっ!? こんなに物腰優雅な貴婦人が!?
確かに親子のやり取りは随分と砕けてたし、親子そろって突然のぶっ飛び告白は血のなせる技なのかもしれないけど。
「昔は色々と身分だの出自だのにこだわる人が多かったから、そうするしかなかったの。でも今は時代が変わったから、そんな事気にする必要ないわ。この子だって町娘の私の血を引いてるんだもの。あなたが気後れするほど高貴じゃないのよ」
そう言って王妃様は、笑いながら彼の腕をパンパン叩いた。
「それにね、確かに町の暮らしとは色々と勝手が違うけど、王宮の暮らしもそれほど悪くはないわよ」
それは王妃様や王様が、そうなるように仕向けてきたからでしょう? だってさっき、昔は色々こだわる人が多かったっておっしゃってた。
変わったのは時代のせいだけじゃなくて、王妃様が努力して変えてきたから。そんな王妃様はかっこいいと思う。
私は何か努力する前に逃げようとしていた。彼の気持ちを無視して、自分の気持ちだけ押しつけようとしていたのは私も同じ。