六歳の頃、親父に殴られたことがある。
二十一年前、七月の暑い日のことだった。
夕方、幼かったおれは、一歳下の弟といっしょに家でかくれんぼをして遊んでいた。
オニになった弟が、十秒数えている間に、おれは隠れる場所を探した。
うちは豆腐屋を営んでいた。家の裏には工場があり、そこで作った豆腐を、スーパーマーケットやコンビニ、小学校の給食室などに卸売りしている。
家の外に出て、庭にある物置小屋に入った。竹箒、脚立、シャベルや三輪車などがしまわれてある。隠れられそうな場所を探して、中を見回した。そしてふと、床の隅に目を止めた。
床に四角形の蓋のようなものがあった。
「なんだろう?」
おれはそこに駆け寄り、その一メートル四方くらいの蓋を持ち上げた。
蓋の下には、地下へ続く階段があった。コンクリートで作られた階段だ。
うちにこんなものがあったなんて。
好奇心がわきあがってきた。
おれはその階段を降りていった。