「いや・・・・・・、でも・・・・・・、怖いし」


困った。


おれは半泣きになった。


さっきのクモシダバーとの戦いを思い出す。


痛かった。すごく痛かった。


塀に叩きつけられたとき、背骨が砕け、肉が裂け、そこから内臓が飛び出したかと思った。それくらいの激痛だった。


それにあのかゆみ。本気で発狂しそうだった。っていうか発狂した。


もう、あんな思いをするのは嫌だ。絶対に嫌だ。


そうだ、逃げよう。


断って、全力で走って逃げよう。どこか遠くまで逃亡しよう。


そして、人のいない所に隠れてじっとしていよう。そうしていれば、誰かがなんとかしてくれるはずだ。おれ以外の、勇敢で力の強い誰かが立ち上がって、シダバーをどうにかしてくれるはずだ。


おれが戦う必要はない。おれなんかよりも、このベルトを巻くのにふさわしい人物がきっといるはずだ。


断ろう。


はっきりと断って、背を向けて逃げだそう。


おれは、口をひらいて、ゆっくりと言った。


「わかった。やるよ」