「弟を、シダバーに殺されたんだよ。目の前でな」ユウ・Uーは歯をくいしばった。「あいつら、弟の死体をぐちゃぐちゃにして、粘土みたいにして遊びやがったんだ」
おれと同じだと思った。
シダバーに、大切な者の命を奪われた。
餅が言った。
「ユウ・Uーは、自衛隊の隊員でした」
「おれは、TF細胞の実験体に志願した。強化人間になって、シダバーをぶちのめしたかったんだ。しかし実験は失敗だった。おれは右腕を失った。いまは、副所長である餅の警護をしている」
おれはあらためて、ユウ・Uーのコートの、ぶらりと垂れ下がる右腕の袖を見た。
「しかし、我々は、その実験データをもとにして、人体に融合したTF細胞を制御する機械を作り出しました。それが、そのベルトです」
餅は、おれの腹を指差した。
「これが?」
おれはジャージ越しに、腰に巻かれたベルトに触れた。冷たくて固い、金属の感触。かなりの重みがある。