クモシダバーの白い裸体が、高く宙を舞う。
逃がさねえ殺す逃がさねえ殺す逃がさねえ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、殺すっ!
あれを殺さないと、かゆみが、苦しみが止まらない。だから殺す。
ジャンプしようとして、かがみ、足に力をこめた。両脚のふくらはぎが、みきっと膨らんだ。
そのとき、頭上に突然、大きな円形の白い布があらわれた。それはおれに覆いかぶさるようにして落ちてきた。
すぐに分かった。
奴の糸だ。
クモシダバーが大量に糸を吐き、それを編んで一瞬で布を作り出したのだ。
白い布はおれにからみついた、粘液が染みていて、体にへばりつく。
「うがあああああああああああっ!!がああああああああっ!!ごあああああああああああああああああっ!!」
必死で暴れたが、はがすのに十秒近くかかってしまった。
クモシダバーの姿は消えていた。
どこからか、声が聞こえた。
「馬鹿な。あれだけ分厚く巻きつけた私の糸を、簡単に破るなんて。私の糸は、高層ビルを粉々に破壊できるほどの強度を持っているというのに。やはりおまえ、只者ではないな。キングシダバー様に報告せねば」
声が遠ざかってゆく。
完全に逃げられてしまったようだ。