壁や天井に急にヒビが入ったかと思うと、いきなり崩れ出したのだ。破片が全て、内側に向かって落ちていった。何か強い力によって、外側から押し潰されているかのような、そんな崩れ方だった。


おれはとっさに親父にかぶさった。
背中に割れた天井板、瓦礫、二階にあったタンスやベッドが降ってきた。
「痛いっ、痛い痛い痛いっ!」
地震だろうか?
動揺しながらも、逃げなければと思い、親父を抱えると、窓ガラスを突き破って外に飛び出した。
「ぶえっ」
すると、顔に蜘蛛の巣がひっかかった。窓の外で、蜘蛛が巣をはっていたらしい。
慌ててそれをぬぐうと、親父を抱えたまま走り、道路に出た。


家から少し離れた場所まで来ると、親父を地面に降ろした。
そして、ふりかえると、おれは絶句した。親父も横で、うわっと声をあげる。


おれの家が、白いものでびっしりと覆われていた。


それは蜘蛛の巣だった。


窓の外だけではなかった。家全体を、信じられないほどの大量の蜘蛛の巣がびっしりと埋め尽くしているのだ。まるでマンガ「すごいよ!!マサルさん」の主人公、マサルの家のようだった。白い布のアレね。わかんないひとゴメン。


さらに驚くことに、その蜘蛛の巣は、ひとりでに動いていた。そして家を締めつけ、破壊しているのだ。


ベキッ・・・・・・バキッ・・・・・・ベキャキャッ・・・・・・


コンクリートが、鉄骨が、派手な音をたてて、崩れてゆく。土煙があがる。目の前で、おれの家が握りつぶされてゆくかのように破壊され、小さくなってゆく。


ふざけた光景だった。
あまりの異常の連続に、頭がおかしくなりそうだった。