「ちょっと待っとけ」


そう一言、言うと
たこ焼きを袋に入れて


「ほら。」


そう、私に差し出した。


わけもわからず受け取るけれど・・・


「それ持って、もう一度行ってこい。」


「え・・?」


「もうすぐ5時だろ?
へたすりゃ、家の主が帰って来てるかもしれねぇし
いなくても その彼女とやらに
これ渡して伝言でも何でも言っときゃいいだろ?
何か手に持っとけば
口実になんだろうが」


「でも・・・・」


「ウダウダ言ってねぇで
さっさと行って
帰ってこい」


背中を押されるように
黒崎伸治のアパートへ向かったけれど



インターフォンを押すべきなのか
この、合鍵で入るべきなのか


私は、再び

扉の前で悩んでいる。


彼女の立場からしてみたら

合鍵で入られると

さすがに良い気分はしないだろう。


・・・それならお客様として入ろう。



ゆっくりと、
インターフォンを押した。


けれど、誰も出てこない。



これは想定外だ。


さて、どうするべきか。