「ルイ……本当に、よかった……。大丈夫?」






あたしを裏切った、ママ。


今そばに来てもらっても、何も嬉しくないよ。





ギュって手を強く握られても、何も嬉しくないよ。








全然、大丈夫なんかじゃない。



正直もう、顔も見たくない。









「ママ。病室から出てって」








あたしは思わず、そう口にした。


病室内にいる内山先生と看護師さんも、唖然だ。




でも。





我慢できない。








「ちょ……ルイちゃん、それはちょっと……」


「いいんです、看護師さん。ママ、手、離して。早く出てってよ。もう顔も見たくない」


「ルイちゃん……」




「……」








ママは、相変わらず黙ったままだ。



そして、あたしの手も、未だに握ったまま。

離してくれない。




もう……ヤダ。







「離してよっ……!」







あたしは、思いっきり手を振り払った。






――今までの、ママからの温もり。


それを全部、一気に、振り払ってしまった感じがした。







そしてママは、最後まで何も言わず、病室から出て行った。