それと、彼女が呼ぶ“ルイちゃん”という名前も。
笑沢ルイ(えみさわ・るい)ちゃんは、僕の患者で。
まだ17歳でありながら、心臓病という大きな病を抱えた女の子だ。
彼女には伝えてはいないが、まだその心臓病の完全な治療法は…見つかっていなくて。
今は薬だけで抑えていたが、いつ最後が訪れるかも、わからないぐらいの。
結構重病の患者だった。
看護師がここまで焦って、彼女の名前と僕の名前を呼ぶということは。
「……また、倒れたのか」
「はい、今お母さんから連絡がっ……!先生、急いでください!」
「……わかった」
笑顔が何とも言えないぐらい可愛い、普通の高校生の女の子。
ケーゴと同じ歳の、女の子。
彼女にはもう、時間がない。
心臓を移植するほか、今のところはもう助かる方法はない。
その心臓も、まだドナーの人が見つかっていなく。
常に危険な状態だ。
僕は急いで、救急救命センターに向かった。