だけどその、大事に大事にお世話をしてきた両親は、いつものように、夜2人で車で遊びに出ている時に、トラックとの衝突事故にあい、僕が高校生の頃に他界した。
それを聞いたとき、今まで以上の憎しみが溢れた。
僕の今までの苦労は、どうしてくれるんだよ。
今までの苦しみを味わわずに、何で逃げていくんだよ。
僕の中の“いい子”は、一瞬で消えた。
それからは、母がたの祖母の家に引き取られ、そこに住まわせてもらっている。
――事故から6年。
今までに味わったことのない、祖母からの深い愛情によって、僕は今、再生できている。
だから今は、素の自分であり続ける。
大事な、患者のために。
笑顔を絶やさず。
まだ28歳という若い医者だけど、誰からも信頼される人間に。
…ケーゴにも、そういう思いを持って欲しい、と思った。