ケーゴはきっと今も、“いい子”って役を、自分の中で演じ続けていると思う。
僕の経験上、彼のそのポーカーフェイスや態度、接し方やオーラを見てると、絶対にそうだ。
――自分以外の人はみんな、自分より格が上だと思ってる。
――自分はいらない人間だと。
――自分は弱くて、誰からも必要とされていない人間だと。
――だから、“いい子”で居続けると。
――“いい子”は誰にも逆らえないんだ、と。
僕も子供の頃は、そう思っていたから。
父と母の、家庭内暴力。
仕事が終わって帰ってくると、2人はいつも僕を置き去りにして、夜の街へ出て行った。
そんな両親を持ったおかげで、小中学生ではイジメに合い。
誰にも口を聞いてもらえず。
僕は家でも外でも、学校でも。
いつでも、“召使い”という存在だった。
いらない時には『消えろ』と言われ
いじめられる時には『ずーっと学校来てね。お前がいると、学校が楽しいんだよ』と言われ
近所の人たちも、僕を避けて通っていった。
それに耐え続けていた幼少時代。
「いつかは仕返ししてやる」と思いながら、常に“いい子”の素振りで。
――殴られても殴られても。
『お母さんとお父さんは、悪くないよ』
『全部僕が悪いから』
――父や母が寝込んでいる時も。
『お父さん、大丈夫?』
『お母さん、僕お粥作ったよ。食べて』
『早く良くなってね』
――酔って帰ってくると。
『お母さん、お父さん。ほら、水』
『布団敷いといたから。早く横になって』
憎しみしかない両親だけど、僕は大事に“お世話”をしてあげた。
だって、死なれちゃ困るから。
大人になって、僕だけの力で一流の医者になったら仕返ししてやると、心で決めてたから。
僕の幼少時代の苦労以上の苦しみを、両親にぶつけてあげたいと思っていたから。