「藤堂、圭伍くんだね」






驚きを一切見せず、満点の笑顔で、僕が彼の名前を確認すると。






「は……はい」






またもやそう小さな声で、ちょこんと頷くしかなかった。









多分彼は――僕に似ている。


いや、絶対に似ている。





今、確信した。










きっと彼は……素の自分を、何らかの理由で隠しているに違いない。









診察中も、彼は、特に何も喋らない。

話しているのは、一方的に僕だけ。






そんな彼のことをもっと知ろうと、僕は彼に、ダメもとでも「ケーゴって呼んでもいいか」「これからは敬語はなしで、タメ口で」など、色々な提案をしてみた。






普通のそのへんの高校生なら、すぐにこんな場所で名前で呼び捨てにしたり、タメ口で話すなどは嫌がるだろう。


断られることを予測しながら、一応、彼にはそう提案してみた。







僕だって、今日初めて会う人にタメ口など、今までに実行したことはなかった。




それに彼は、とりあえずこの病院の患者様であって。

多分そんな提案をすることは、人としてどうかと思うが。









でも彼は、その提案を、すんなりと受け入れてくれたのだ。







「“ケーゴ”でいいですよ」







明らかに、おかしい。