ちょっと呆れながらカルテを見ていると。
――コンコン――
診察室のドアのノック音が聞こえた。
「先生、藤堂さんです」
「あ、はい。どうぞ」
ガラッとドアが開き、今さっき出て行った看護師が姿を現した。
その後ろから――患者が入ってきた。
「失礼します…」
今にも消え入りそうな、男とは思えないか細い声で。
そう挨拶をしながら、彼は診察室に入ってきた。
「……」
男らしいスポーツ刈りの、黒髪。
黒いジーンズに青いTシャツ。
今にも家から飛び出してきたと思われる、左右違う種類のスリッパ。
少なくとも、僕がイメージしていたいつものガキ達とは、全く違った。
どこからどう見ても、普通の真面目な高校生だった。
その高校生の顔は…見るからに痛々しく腫れ上がり、出血がひどかった。
何をしたんだ。
何があったんだ。
お前はきっと、そんなことをする奴じゃないだろ。
でもこれは、明らかに、誰かに殴られた傷だった。