もう、自分は弱いなんて思わない。
先生の言うことを信じる。
これ以上、自分を見くびらない。
俺は俺。
親父は親父。
お袋はお袋。
クラスメートはクラスメート。
自分が一番情けないなんて思ってはいけない。
それじゃ人生、生きていけない。
「よしっ…」
座っていた地面に手をつき、俺は立ち上がった。
「先生。俺はもうレントゲン室行ってくるから。今から運ばれてくる人、絶対に助けろよ」
俺が立ったと同時に、先生も立ち上がった。
先生はもう、すごくすっきりした顔をしている。
今にも、ハンドパワーとかで助けてくれそうな感じで。
「分かってるよ。当たり前だろ。内山大智はこの病院のナンバーワンの医者だ」
「ははっ。わかってたら別にいいけど」
先生が笑う。
俺も笑う。
先生の笑顔は、やっぱりすごく落ち着く。
この笑い顔は、医者という職業に向いている顔だと思った。
今までに体験したことのない、すごく落ち着いた雰囲気の中。
―――ピロピロピロピロッ!
――ピロピロピロピロッ!
「っ!?」
「……来たか、ルイちゃん」
救急救命センター中に、大きなサイレンが鳴り響いた。
おそらくこれは…患者が運び込まれてきた時の音。