――
――――
―何言ってんだよ…。
「……っ」
ものすごく低くて落ち着いたトーンで、そんなことを言われたら…
何でだろう。
自然と――涙が出てきた。
でも…俺は弱い。
強い奴は、こんなに涙なんか見せたりしない。
「っ…俺は……っ、弱っちい人間だよ……っ」
嗚咽混じりに。
先生に向かってそう言った。
それでも先生は、俺にどうしても諦めて欲しくなかったんだと思う。
涙を拭っていた俺の手を取り、また、真剣な目で見つめられた。
「ケーゴ。そんなに自分を見くびるな。
お前は十分強い。
本当に弱い奴は、
今からここに運び込まれてくる人のことなんか
絶対に考えたりしない。
いつでも自分のことしか考えない。
でもお前はちゃんと
その人を考えて、怖がってるじゃないか。
その人のことを思って、震えてるじゃないか。
その恐怖感は、強い人間にとって
とっても大事なことなんだぞ。」
――真っ暗な、救急救命センター。
その窓口の下の地面にちょこんと座っている、俺たち男二人。
傍から見たら、ただの変な二人組だろう。
こんな真っ暗な場所で、二人で屈んで話をしているなんて。
……でも。
「……んで先生が、んなこと分かるんだよ……っ?」
「バーカ。先生はなぁ、お前よりもたくさん、人生を生きてるんだよ」
「……俺とあんま歳変わんないくせに……」
「それはそうだが……でも、お前よりは長く人生を生きている。それに変わりはないだろ?」
「……」
――先生。
内山先生。
…ありがとう。
本当に、ありがとう…。
あなたのおかげで俺、救われた気がします。