もしかして、俺に物心がつく前に……みたいなこと考えてた?
あぁ、残念でしたー。
俺、もう物心とっくの昔についてましたから。
だとしたら、都合の悪いこと言っちゃったなぁ。
軽く……いい気味だ。
未だに何も言わず、ただ目だけが泳いでいる叔母さん。
すると突然、座っていたカーペットの上から、慌てて立ち上がった。
「あっ、えと、その前に圭伍!あ、あなた病院に行きなさい!骨折れてるでしょそれ!」
「……は?」
「ほら、お金出してあげるから!あ、なんなら叔母さん、ついってってあげてもいいのよ?」
――んだよ、それ。
叔母さん。あんた、ほんと都合良すぎ。
心配してるとかでも言いたいわけ?
ありえねぇっつの。
最悪。
最低最悪の気分だ。
その時、叔母さんに差し出された大量のお金。
今まで見たことのない、札束ってやつ。
……信じらんねぇ。
俺はその手を無視して、玄関に向かった。
「結構です!俺自分の金持ってるから。じゃ、行ってきます!」
俺にこんな思いさせといて、自分はあんなに金持ってるわけ?
今みたいに、ビンボー人にそうやって見せつけてるわけ?
ダメだ。
これ以上ここに居ると、手を出してしまいそうで。
殴ったらまた、親父にやられる。
「ちょ……圭伍!叔母さんが、病院まで送るわよ!だってその顔じゃ―――」
―――バタンッ!
そう思った俺は。
叔母さんの言葉を、聞かなかったフリして無視をして。
思いっきりドアを閉めて、家を飛び出した。