―――圭伍くんは、静かに語り始めた―――。
家庭環境。父親の暴力。
生き別れの妹。今までの嘘。生き方。
苦しかった生活。人間不信。
父親に殴られた頬。学校の屋上。
叔母と再会。この病院に診察に来たこと。重度の骨折。
内山先生との出会い。変わってきた気持ち。自分。
……涙が、止まらなかった。
圭伍くんも、素直に、涙を流した。
苦しかった?辛かった?
ごめんね。あたし、何も知らなかった。
何が、“ただの同情”?
あたし、最低だ。
何もわかってなかったのに、圭伍くんにずっと文句ばかり言ってた。
あたしなんて、どん底を味わってるなんて言えないじゃん。
圭伍くんの方が、よっぽど辛いじゃん。
…悲しいじゃん。
「……ごめん、ルイ……」
握られたままの左手には、圭伍くんの体が微かに震えていることが伝わってきた。
さっきより、握られる力は弱い。
「……んで、謝るの……。悪いの、あたしじゃん……ごめんね」
「違う……。ルイは何も悪くない……」
今度はあたしがちゃんと握らなきゃ。
支えててあげなきゃ。
圭伍くんの震えている手を、今度はあたしが強く握り返した。