それなのに、俺は……。
自分だけが、不幸な人間だと思い込んでて。
自分だけが、苦しんでるんだと思い込んでて。
俺以上に苦しんでいるやつなんかきっと、この世にたくさんいるのに。
前屋上で見た女だって――苦しんでいたの、わかったのに。
一人だけ、悲劇のヒロインみたく思ってて。
……最低だ。
「……で、ケーゴに頼みがあるんだけど」
「俺に、頼み?」
「ああ……。ルイちゃんに、会って欲しいんだ――」
えっ……俺が?
何で?
何の理由があって?
つか俺、まだ顔治ってねえし……。
何で俺が?
「……“何で俺が?”って、思っただろ?」
「――っ!」
「ハハッ。相変わらず、お前もルイちゃんと似て、分かりやすいな」
いやいやいやいやっ。
“ハハッ”じゃねえから、先生。
ガチで。何で俺が?
俺が“ルイ”に会う理由なんて、あるか?
俺は……最低な、弱っちい人間だ。
「それがなぁ……理由が、ちゃんとあるんだよ」
「何だよ、それ…。俺は最低な人間だから……会う資格なんて無い」
「だから、最後まで聞けって」
理由なんて。
どうせ、先生の勝手な想像だろ?
きっと“ルイ”だって、俺と会っても嫌な気持ちになるだろうし。
俺を受け入れてくれた人間なんて、内山先生ぐらいだよ。