“笑沢ルイ”。
それが、彼女について初めて知った出来事だった。
笑沢っていう苗字なんて、珍しい。
幸せそうな名前だな…。
いつも笑っていそうな……羨ましい名前。
そして名前は、カタカナで“ルイ”。
カタカナの名前なんて、これまた珍しい。
ハーフでもあるまいし。
きっと、彼女の両親は、いろんな意味があって名づけたんだろう。
たった一言。
名前しかまだ教えられていないのに。
こんなに想像するなんて……何か、変な感じ。
「……で?」
「僕はあの運ばれてきた日…ルイちゃんを救った。というか……一命は、取り留めたって感じか……」
一命は、取り留めた――?
何だよ、それ。
もうすぐ“死ぬ”みたいな言い方――。
ダメだ。死ぬなんて。
誰も死んじゃ、ダメだ。
あんまり知らない奴だけど……胸が、苦しくなってくる。
「……アイツ……病気、なの?」