「ケーゴぉ。僕、腹減ったんだけど」
「黙れ。つか、どっかで食ってこればいいだろ」
「お客様に向かって……」
「勝手に押しかけて上がり込んでくる奴なんか客にカウントしない」
顔の怪我も、少しずつ回復してきている。
週1で病院に通って、先生と話して。
俺は素直じゃないから、先生に礼なんて一度も言ったことはないけど。
本当は、すごく、感謝している。
先生のおかげで、俺の生活は変わった。
“ひとりぼっち”の時間が全然なくなって。
先生はもちろん大人だから、大切な人の命を助ける“医師”という仕事があって、いつも俺に近づいてくるわけじゃないけれど。
――『“ひとりぼっち”ではないんだ』って
そう、教えてくれたから。
先生が家に来るようになって、文句を言いながらも、俺は心から感謝している。
まだ
“信頼できる”とか、
“友達”とかではないけど。
歳もまあまあ上ではあるけど。
先生のおかげで、人生が、退屈ではなくなった気がする。
先生のおかげで――俺の中で少しだけ、何かが変わっていることは分かってる。