一人ぼっちなのは、今までと同じ。
誰もあたしのそばにいてくれないのも、今までと同じ。
誰もあたしを分かってくれていないのも、今までと同じ。
……でも。
今までと違うことが、一つだけある。
それは――知ってしまった、“藤堂圭伍”くんの存在だ。
今まで居なかったあたしの世界に、名前だけだけど、突然入り込んできてしまった。
謎の人物、圭伍くん。
内山先生が教えてくれた彼のことが、気になって仕方がない。
こんなあたしに会わせたい人って。
きっと、何か事情を抱えてる人に違いない。
「……圭伍くん」
一人の静かな病室で、ぼそりと、名前だけ知っている彼を呼んでみる。
……変な感じ。
男の子の名前なんて、今まで、あまり呼んだ経験がないから。
小学生の頃、心の中で、少しだけ、好きな子の事を呼んでいたぐらい。
それから恋なんて、したことなかったから。
する余裕なんて、なかったから。
恋じゃなくても、だれかの名前を呼ぶなんて……なかったから。
ただ、それだけしか変わったことなんてないのに。
――不思議と、ワクワクしていたんだ…。