結局、ずっと背を向けたまま、先生は病室のドアを開けた。
どんな顔をしているのかも、分からないまま。
また一人になるんだ……。
そう思って、一人だったらまた眠ろうと、布団に頭を突っ込んだ。
目を閉じようとした、その時。
「…ルイちゃん」
あたしの名前を呼ぶ、内山先生の声がした。
あたしは今、布団の中で背を向けていて、先生がどこを見ているのか、どんな顔をしているのかは分からない。
でも一応、布団の中で返事をした。
「……何?」
「僕が今、ケーゴの話しただろ?」
「……うん」
“ケーゴ”とはきっと、さっき先生が話してくれた、“藤堂圭伍”くんのことだろうか。
…ちょっと崩して名前を呼んでいるなんて。
先生と、親しい人なんだろうな。
圭伍くんって、どんな人なんだろう……。
先生は、名前しか教えてくれなかった。
すごく、気になる。
いつ会えるんだろう。
いつ来るんだろう。
そう考えていると。
先生は、あたしの心の中を、まるで見透かしているように。
「……ケーゴと、会ってみたいって……思った?」