いや……行かないで、先生……。
そう思っていると、突然、先生は足を止めた。
「せんせ―――」
「…ルイちゃん。君に、会わせたい人がいるんだ」
あたしに背を向けたまま、先生はそう言った。
あたしに…会わせたい人?
…誰?
「そいつは、“藤堂圭伍”って言ってね。きっと…会ったら君も、彼も、変われると思う」
藤堂…圭伍、くん。
それが――彼について知った、はじめての出来事だった。
「……」
「今はまだ、彼もちょっと調子が悪くてね。もう少ししたら、彼をここに連れてくるから」
圭伍くん……。
どうして先生は、あたしとその人を会わせたいって思ったんだろう。
圭伍くんは…どんな人?
まず、誰なの?
あたしと関わりのある人?
名前だって、初めて知った。
先生の魂胆は……?
「じゃあ、僕はこれで。今からまた、診察なんだ」
「……そうなんだ。分かった」
ちょっと寂しいけど……診察だったら、仕方ないか。
でも、先生と話したおかげで、気持ちがちょっとだけ軽くなった気がする。
先生はやっぱり、魔法の人間だ。