泣いていた。
夕暮れ公園。陰の濃くなった世界のベンチで、少女は泣いていた。
外灯が明かりをつけ始める。そろそろ夕方は終わり、夜へと変わる時間だ。
子供は家に帰る時間。だが
――あんなところ、帰りたくない。
少女の横に置かれたランドセル。そこに付いている名札は名字の部分が黒く塗りつぶされていた。
「お姉ちゃん」
少女が顔をあげると、ほっぺに冷たいものが触れた.
ゆるり。
軟膏のつんと鼻につく臭いに眉毛が寄る。
「しみるよ…」
「あ、うん、ゴメン」
指の動きが気持ち優しくなった。
軟膏は傷に沿って塗られ、まるで傷口の熱が吸い取られているようだ。
気付けば涙も引いている。
今度は少女も弟に軟膏を塗ってあげようと、弟の手か薬ビンを取り、乳白色のクリームをひとすくいして手に馴染ませる。
目を閉じ、塗りやすいように上顎を突き出してくる弟の顔は、おなじくヒドイ有様だった。
切り傷、火傷、腫れたアザ。
夕暮れ公園。陰の濃くなった世界のベンチで、少女は泣いていた。
外灯が明かりをつけ始める。そろそろ夕方は終わり、夜へと変わる時間だ。
子供は家に帰る時間。だが
――あんなところ、帰りたくない。
少女の横に置かれたランドセル。そこに付いている名札は名字の部分が黒く塗りつぶされていた。
「お姉ちゃん」
少女が顔をあげると、ほっぺに冷たいものが触れた.
ゆるり。
軟膏のつんと鼻につく臭いに眉毛が寄る。
「しみるよ…」
「あ、うん、ゴメン」
指の動きが気持ち優しくなった。
軟膏は傷に沿って塗られ、まるで傷口の熱が吸い取られているようだ。
気付けば涙も引いている。
今度は少女も弟に軟膏を塗ってあげようと、弟の手か薬ビンを取り、乳白色のクリームをひとすくいして手に馴染ませる。
目を閉じ、塗りやすいように上顎を突き出してくる弟の顔は、おなじくヒドイ有様だった。
切り傷、火傷、腫れたアザ。