「きれいな女だったわ、まるで天女だったわ、やい」



 老人の顔は晴れ晴れとしていて、悔やみ悲しさなど感じなかった。



 「やぁ、ほんとうに天女だったんだわ」



 「奥さんですか?」

 私の問いに、老人は頷いた。


 「あいつがいりゃあ、それで良かったよ。そこにいてくれりゃあ、何も心配いらなかったんだわ、やい」



 秋はすぐに過ぎ去ってしまう。
 秋風の爽やかさは、すぐに凍てつく北風にとって変わる。



 「日本舞踊の家の娘でな、みんな嫁にしたがる別嬪だったわ」