水をゴクゴクと音が鳴る程飲む度、頭を反らした事で晒される喉が激しく上下する。口の端しから垂れる水も勿体無いと言う様に、手で拭い去りそれもべろりと舐め取る。

その姿はまさに植えた獣。

渇いて渇いて仕方のなかった喉。

飲みたくても飲めなかった水。

それに漸くあり付けた獣が、己れの欲求を満たす様に一心不乱に獲物に喰い付くかの様なその光景に、ただ一人見物して居たリズシアの瞳は…酷く冷たい物で在った。


「っ、はぁ…はっ……」

「ほんと、人間ってよく分からない生き物だよ。自から進んで苦しみを選ぶなんてさ」


ペットボトルの水を全て飲み干してしまった凌空は、それでも未だ訴える焼け付く様な喉の渇きに苛立つ。

苛立ちその場にペットボトルの殻を投げ付ける凌空の姿に、リズシアは空中でまるで椅子にでも座って居るかの様に座り、足を組んで頬杖を付き見物して居た。