学校の、教室から一番遠いある男子トイレの一番奥の一室。その一室の鍵は固く閉じられて居る。
固く閉ざされたその一室には、フードを深く被り扉の隙間から差す僅かな光すらも逃げる様に、その男子は閉めた便座の蓋の上に座り込んで居た。
そんな狭い一室の中に居る男子の他に、その一室にはもう一人存在して居た。しかし狭いその中に、人がもう一人入れる筈がない。
「ねぇ、いい加減我慢するの辞めたらー?」
「う、るせ……っ」
その男は荒い息を繰り返すその男子に対し、その男子を見下ろしながら可笑しそうに笑う。
そう、男は……天井近くまで浮いて居たのだ。
「キミもつくづく変わってるよね〜。そんなに苦しんでまで我慢するなんてさあ?」
「お、まえには…。わから…ぐっ、ねぇよ…!」
「そりゃあねー」
フードの下からギロリとした目付きで上に浮かんで居る男、リズシアを睨み上げた。
しかしそんな男子、凌空の睨み等リズシアは気にする事なくふよふよとワインを片手に彷徨って居る。