それっきり俯き話さなくなった由希に、眉を寄せ考え込む様に唸ったりえは、
「考え過ぎじゃないの? 今日は寝ぼけてて気付かなかったとかさ、なんか考え事してて由希を忘れて先行っちゃった、とかさ?」
「うー…」
「それにそもそもさ、高校生にもなってまだ幼なじみと一緒に学校行き帰りするのも珍しいのよ? それと、それぞれの部屋を行き来するのも!」
「普通は気恥ずかしかったり、思春期だったりで離れるものなの!」っと力説し始めるりえをちらりと見て、俯きもじもじと手を動かし落ち込む。
りえの言う事を誰よりも分かっているのは、由希自身だ。自分の考え過ぎだと言う事も、たまたま朝そうなっただけであって、帰りはけろりと元に戻って何時もの様にクラスに迎えに来てくれる筈だと。
そう自分自身に言い聞かせ、心配そうにして居るりえに笑みを浮かべ、それからの由希は何もなかったかの様に振舞い、笑みを絶やす事はなかった。