(どんなに前の日に喧嘩をしても、おはようの挨拶だけは必ずしていた。それに次の日になれば、自然と元に戻ってる事だってあるのに…)
様子の違う凌空に、由希は何かしてしまったのかと不安になる。だが今度は先程より大きな声で名前を呼び、凌空の腕を掴んで引き留める事にした。
腕を掴まれ引き留められた凌空は、一度息を吐き出し由希に視線を向ける。
「なに?」
「なにって…なんで呼んでるのに無視するの?!」
「ああ…気付かなかった」
悪かったと由希から視線を逸らし前を見据える凌空に、納得など出来る筈もなかった。
(気付かなかったなんて、そんな事ある訳がない。こんなに近くで、それも大きな声で言ってたのに分からないなんてオカシイ)
スタスタと俯き加減で前を歩いて行く凌空の後ろ姿を、由希は不満げに睨み付けた後、その何時もとは違う凌空の背を追った。
結局、学校に着くまで会話らしい会話をする事がなかった二人は、微妙な雰囲気なままそれぞれのクラスに別れる事となった。