凌空は背を向ける由希の首に手を回し、ネックレスを前に持って来る。そして先程の由希と同じ様に留め具をアジャスターに引っ掛け、由希の髪の毛を払おうとして……凌空の手が止まる。
髪の毛によって隠されていた項が晒され、白いそれに凌空は目を奪われた。
細く白いそれに触れ様とした瞬間ーー
「凌空、どうしたの?」
由希の不思議そうな問いにハッと我に返った。
「い、いや…なんでもない。出来たぞ」
「でも、また具合悪くなったんじゃ…」
振り返った由希の顔は心配そうに歪んでおり、それに凌空は大丈夫だと言う。だが由希は、様子を伺う様に顔を覗き込み…
「え…」
目を疑った。
「り、く…目が――」
赤い。
そう言う前に、凌空は目を見開き顔を反らした。あの時の様に瞳を赤く染める凌空に、由希は言葉を失くす。
(何処かでそれだけは違うと思ってた。私の見間違いだったんだって、だけど……)
「な、なんの事だよ」
「え、なんの事って…凌空の目が…」
由希の方を見た凌空に、今度は由希が目を見開く番だった。
先程は確かに赤く染まって居た筈の瞳が、今は赤く染まってはおらず、何時もの黒い色をしている。