凌空は改めて手の甲のネックレスを見た。

蝶に巻き付く様に絡んでいる蛇。蛇の目には赤い石が埋め込まれている、シルバーネックレスだった。

小さいながらも蝶の羽根は丁寧に模様が彫られており、今にも蝶が動き出し何処かへ飛んで行ってしまうんじゃないかと錯覚を起こさせる程だ。

そして蝶に巻き付く蛇の体は滑らかで、綺麗な丸みを帯びており、蝶に近付く者を遠ざけているかの様に開かれた口は、一本一本の歯まで丁寧に造られ、凌空はこんなにも端整混まれたネックレスを見た事がなかった。


「お前…これ、」

「へへっ、気にいった?」

「いや、気にいるっつーか…」


困惑した様にネックレスと由希を交互に見る凌空。こんなにも丁寧に丹精込めたネックレスが、由希や自分に買える訳がない。と、嬉しさの反面心配していた。


「これどうやって買ったんだよ、お前にそんな金…」

「ああ~、大丈夫だよ! 凌空が思ってるほど高くなかったしっ」


大丈夫だとピースする由希に、凌空は納得出来る筈もなく、「でも!」っと尚も聞き出そうとする。絶対に聞き出すまで諦めないだろう凌空に、由希は仕方なくと言った感じで観念した。


「それね、ヒサちゃんに造って貰ったの」

「ヒサ兄に?」

「うん。ヒサちゃんってシルバーアクセサリーのショップやってるでしょ? だからこのデザインで造って~って頼んだの」